昭和中期のモルタル塗りの外壁にアルミサッシがついた和テイストな築50年の平屋の住宅改修。
 改修では予算の中でどこまで改修するかによって設計の内容が大きく変わってくる。まずは優先順位をつけるのだが、築年数を考慮すると耐震性も断熱性も今の基準や性能からは大きくかけ離れていること、今後長い時間をここで生活することなどから、これらの改修は必須であると判断し、内部をスケルトン(構造駆体をあらわし)の状態にする全面改修を行うことにした。また、外部は断熱性に劣るアルミサッシを交換し、これにかかわる外壁を改修することにした。
 いざ、解体するとシロアリの食害や湿気の影響により構造体の一部が朽ち、また、過去のリフォームにより必要な柱が抜き取られ強引な構造補強を行っていることが発覚するなど、現場では常に新しい問題に対応しながら予算や設計内容の調整を行いプロジェクトが進められた。

 内部空間は、ベースの骨格である間取りを踏襲しつつ、家族の生活スタイルに合わせ大きく配置換えをしている。広い玄関ホールと一間の広縁が一体的につながり、各部屋に接続する形式は、他の空間と床の高さや床面の仕上げを変え、領域を分けることで路地が展開するような空間に再構築している。一方で路地とそれぞれの空間の壁の仕上げは統一されているが、これによって光の強弱を繊細にうつしだし、全体が陰影に包まれた豊かな空間となっている。また、路地との接点となる出入口(開口部)をデザインすることで、ひとつの繋がりを持ちながら奥行きの深い多様な展開を感じる空間が出来上がった。
 これまで隠されていた既存の構造体を空間にあらわし、新たにつくる部分には素朴で表情の豊かな材料を用いることで、古さと新しさの融合を図り、築50年の時間を継承するような落ち着きのある「次の50年を見据えた」住宅となった。

所在地:福島県郡山市
用 途:住宅
規 模:平屋建て
構 造:木造
床面積:110.29 ㎡
竣 工:2020年8月
施 工:信和建設株式会社​

仕 様:UA値 0.33 W/(㎡・K)
     Q値 1.52 W/(㎡・K)